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⑪「湯煙に取り憑かれた男」

  • 執筆者の写真: 梅原江史
    梅原江史
  • 9月16日
  • 読了時間: 3分

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新潟県長岡市で暮らし始めた頃から温泉にハマりました。

きっかけは「麻生の湯」という長岡の温泉でした。

慣れない生活の中で、僕はずっと長岡のことが好きになれませんでした。

ふと立ち寄った日帰り温泉が思いの外素晴らしく、「僕は長岡の何を知りもせず…」と自分を省みたのです。

そこから他の温泉にも興味が湧き、県内各地の温泉に立ち寄る様になりました。

僕は新潟のことを新たな地元として認識する上で、温泉をきっかけにアップデートしてきました。


新潟県は特に泉質のバリエーションも豊富だなと思います。

明らかな違いをひとつひとつ確かめられるのも温泉通いの醍醐味ではないでしょうか。

それぞれに個性際立つ新潟の温泉の中でも特にお気に入りの温泉をいくつか紹介させて下さい。


天然温泉 門前の湯(上越市)

上越ICのすぐ側にある日帰り温泉。

ややとろみを感じる湯ざわり、それ自体はスタンダードなんですが、ここのは疲れの取れ方が尋常じゃありません。

湯出口に北投石を設置しているとの説明が書かれていたのですが、そのおかげだとしたら北投石おそるべしです。

こちらはホテルを併設しており、格安なこともあり泊まりで利用することが多いです。

滞在中、僕は少なくとも3回はお風呂に浸かります。

僕が温泉に求めるほぼすべてがここにはあります。

県内では最も多くリピートしている施設です。


安田温泉やすらぎ(阿賀野市)

安田といえば、ヤスダヨーグルトやサントピアワールドが有名ですが、梅原的にはやすらぎ推しです。

ややレトロでノスタルジックな施設内の雰囲気がとても好きです。

炭酸成分が豊富とのことで、爪先からじんわり温かくなる、まるでマッサージされた後の様な感覚。

こちらも泊まりで利用することが多いのですが、特に朝風呂を楽しみにしていて、1日の絶頂を早朝に既に終える背徳感がたまりません。

「始まったばっかやけど、もう今日終わってもえいで」的な。

施設内の食堂は何を注文してもなかなか美味しい。

合わせてお楽しみ頂ければと思います。


おいらこの湯(長岡市)

栃尾地域にある日帰り温泉。

とろみのある温泉の中でも特にここは化粧水の様な極端なインパクト。

美人の湯と形容される温泉は多いですが、風呂上がりの保湿でいえば、確かに実感ありました。

女性の方は特に気になる部分なのかも知れません。

騙すつもりはないですが、騙されたと思って試してみてはいかがでしょうか。

違いを、まさに肌で感じられる筈です。


まつだい芝峠温泉 雲海(十日町市)

ご近所の松之山温泉ほど極端ではありませんが、やや石油の匂いが感じられます。松之山温泉という絶対王者的な存在が近隣にあり、泉質だけでいえば「ライトな松之山」で語られそうなものですが。

誰が何といっても雲海には雲海の唯一無二の魅力があります。

海抜380mの露天風呂から見下ろす風景はその現実を疑うくらいに特別な体験。

その絶景に見惚れているうちに肌にピリピリと僅かな刺激を感じる。

体が「温泉堪能しました」の合図、僕はこれを風呂上がりのバロメーターにしています。

ええ、確かな泉質の証明です。


まだまだ紹介しきれないくらいに温泉が数多く点在する新潟県ですが、近年は閉鎖を余儀なくされる施設も少なくありません。

資源はいつまでも続くとは限らないから、せめて訪れることができたという思い出だけはずっと抱いていたいものです。


世の中を絶望的な目線で語る言葉もよく目にします。

僕は湯船の向こうで首を横に振ります。

そして、こう口にするでしょう。

「温泉に浸かりながら口にする絶望なんて言葉、おれは知らない」と。

 
 
 

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